レ・ミゼラブルは1862年フランスの文豪ヴィクトル・ユーゴーによって書かれたフランスの歴史小説で、古典文学としてずっと語り継がれている世界的な名作です。レ・ミゼラブルは原作に基づいてミュージカルや舞台、映画化もされています。ストーリーが長く、歴史的な背景も絡んでくるので簡単なあらすじと5分で分かるフランスの歴史を解説します。
レ・ミゼラブル あらすじと登場人物
ヴィクトル・ユーゴーはフランス・ロマン主義の詩人・作家で、『レ・ミゼラブル』の著者として世界的に有名です。政治にも関心を持っていたので7月王政時代からフランス第2共和制の政治家でもありました。
◆原作のタイトルはLes Misérables(レ・ミゼラブル)5部構成になっています。
1.ファンティーヌ(Fantine) |
2.コゼット(Cosette) |
3.マリユス(Marius) |
3.プリュメ通りの牧歌とサン・ドゥニ通りの叙事詩
(L’idylle rue Plumet et l’épopée rue Saint-Denis) |
5.ジャン・ヴァルジャン(Jean Valjean) |
・レ・ミゼラブル 簡単なあらすじ
フランス革命、ナポレオン失脚後の混沌とした社会情勢の渦中にあったフランスが舞台
1815年10月のある日、ジャン・ヴァルジャンと名乗る男性がミリエル司教の元を訪れる。ジャン・ヴァルジャンは1本のパンを盗んだ罪で19年も服役していた。
1819年ジャン・ヴァルジャンはビジネスで成功しマドレーヌと名乗っていた。彼の営む工場ではファンティーヌという女性が働いていて、彼女の娘コゼットはテナルディ夫妻に預けられていた。
解雇されたファンティーヌは貧困のため髪の毛や前歯までも売っていたが、ジャン・ヴァルジャンに救われる。エナルディエ夫妻はコゼットの養育費と名乗ってファンティーヌからお金を搾取していた。ファンティーヌは病に倒れ、ジャン・ヴァルジャンも私服警官のジャヴェールに逮捕されてしまうが脱獄を図る。
1823年のクリスマス、ジャン・ヴァルジャンはコゼットに出会う。彼はエナルディ夫妻から虐待を受けていたコゼットを連れてパリへ逃亡し、修道院で暮らし始める。
ある日、共和派の秘密結社ABCの友に属するマリユスという若者が公園で見かけたコゼットに一目惚れしたことがきっかけで二人は出会う。その頃フランスで勃発していた革命や暴動の混乱の中で、ジャン・ヴァルジャン、コゼット、マリユスの3人が織りなす物語が展開していく。
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・レ・ミゼラブル 主な登場人物
・ジャン・ヴァルジャン
1本のパンを盗んだ罪で逮捕されるが、ミリエル司教のおかげで改心する。後にファンティーヌの娘コゼットを養育することになる。
・ジャヴェール警部
ジャン・ヴァルジャンを執拗に追いかけ逮捕劇を繰り返す私服警官。最後は改心した彼を逮捕せず、自らの過ちを認めノートルダム橋からセーヌ河へ身を投げる。
・ミリエル司教
行き場のないジャン・ヴァルジャンを暖かく迎え入れ、彼を改心させた。
・ファンティーヌ
娘のコゼットをテナルディエ夫妻に預けてマドレーヌ(ジャン・ヴァルジャン)の経営する工場で働くが解雇され、貧困に喘ぐ。最後はジャン・ヴァルジャンに看取られて亡くなる。
・コゼット
幼少のうちからテナルディエ夫妻に預けられていたため母のことをよく知らずに育つ。夫妻からは虐待を受けていたためジャン・ヴァルジャンが救い出す。
・マリユス
パリで暮らす貧乏な青年弁護士で、親友の誘いを受けて秘密結社ABCの友に所属する。公園でコゼットを見かけて一目惚れし、後に二人は結婚する。
マリユスは若き日のユーゴ自身がモデルになっていて、ユーゴの人生をマリユスの少年時代に重ねて投影している。
・エナルディエ夫妻
パリ郊外のモンフェルメイユで宿屋を経営する夫婦。お客からお金を搾取するような小悪党で、コゼットを虐待していた。
・ガヴローシュ
エナルディエ夫妻の息子で両親から愛されずに育ち、バスティーユ広場に展示されていた象の中で生活するパリの浮浪児。悪党やABCの友のメンバーと親交を深めていた。1832年暴動に参加していた際、銃弾を受けて亡くなる。
・レ・ミゼラブルに登場する舞台とロケ地
1789年7月パリ市民が暴徒化し、バスティーユ牢獄を襲撃したことが発端となりフランス革命が起こりました。バスティーユ広場はフランス革命の舞台となり、原作の「レ・ミゼラブル」に登場します。牢獄は革命時に解体されたため残っていません。現在は、1830年の7月革命で犠牲になった市民を奉る記念柱が建てられています。
ノートルダム橋はフランスのパリ・セーヌ河に架かる橋で、「レ・ミゼラブル」のロケ地になりました。この橋はセーヌ右岸とシテ島を結んでいて、シテ島にはパリの象徴とも言えるノートルダム大聖堂をはじめ、最高裁判所、警視庁などがあり観光名所になっています。
ユネスコ世界遺産に登録されているノートルダム大聖堂は、フランス・パリのシテ島にあるローマ・カトリック教会の大聖堂。フランス中世ゴシック建築を代表する建物で、ノートルダムとはフランス語で「我らが貴婦人」すなわち聖母マリアを指しています。大聖堂[…]
ノートルダム(大聖堂)から見下ろすセーヌ河
レ・ミゼラブル 歴史と時代背景
レ・ミゼラブルはフランスの歴史小説のため物語を理解するためには、歴史や時代背景を知っておく必要があります。
・フランスの歴史と政治
出来事・イベント | 歴史・政治的背景 | 主な人物 |
1789年フランス革命
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自由・平等・友愛
資本主義と憲法の確立 革命によって王政と封建制が崩壊 |
国王ルイ16世
マリー・アントワネット 1793年処刑
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1804年フランス第1帝政
1815年ワーテルローの戦い |
フランス革命で国王ルイ16世を処刑し共和国を樹立(第1共和制→第1帝政) | 皇帝ナポレオン1世が支配する軍事独裁政権だがワーテルローの戦いで敗れ失脚 |
1815年~1830年 王政復古 | ナポレオン没落後に第1帝政が終焉、王政が復活した | ルイ18世
シャルル10世(弟) |
1830年7月革命と王政 | フランスで勃発した7月革命後、ルイ・フィリップを国王とした王政(7月王政) | ドラクロワ『民衆を導く自由の女神』(7月革命)
→レ・ミゼラブルの登場人物(ガヴローシュ) |
1848年2月革命と6月蜂起 | ヨーロッパ各地で起こった革命(プロレタリアート主体)*社会主義の台頭→ブルジョワと社会主義者の対立が激化し6月蜂起 | 国王ルイ・フィリップはロンドンに亡命、王政が崩壊(第2共和制へ)
ナポレオン3世の皇帝即位(第2共和制→第2帝政) |
ドラクロワ『民衆を導く自由の女神』はフランス7月革命がテーマになっていて、絵画の中に描かれているピストルを持った少年は、ガヴローシュのモデルになったと言われている。
ヴィクトル・ユーゴー著の名作『レ・ミゼラブル』を原作に、ヒュー・ジャックマン、ラッセル・クロウ、アン・ハサウェイら豪華キャストを迎えたミュージカル映画。第85回(2013年)アカデミー賞でヒュー・ジャックマンが主演男優賞にノミネート、アン・ハサウェイが助演女優賞を受賞しました。
◆スタッフ・キャスト
監督:トム・フーバー
ジャン・ヴァルジャン:ヒュー・ジャックマン
ジャヴェール:ラッセル・クロウ
ファンテーヌ:アン・ハサウェイ
コゼット:アマンダ・セイフライド
マリウス:エディ・レッドメイン
まとめ
1862年に出版されたヴィクトル・ユーゴーの『レ・ミゼラブル』は世界中で愛されている作品です。日本でも明治時代に翻訳され紹介されました。フランス革命後の19世紀フランスが舞台で、歴史や政治、絵画からインスパイアされている作品です。