英語を習得するには英語の本をたくさん読んだり聞いたりすることが不可欠です。たくさんの英語をインプットする作業を行わないと、当然話したり書いたりするアウトプットもできません。英語で難しいことを話せなくても当然です。なぜならやさしいことも話せないからです。そのため、英語を上達させるにはやさしい英語に触れることから始めます。英語の習得にはある程度時間がかかります。しかし、時間をかけても正しい方法で勉強しなければ上達しません。今回ご紹介するのは英語上達のための英語多読の正しいやり方とおすすめの洋書をご紹介します。
英語多読の正しいやり方
英語多読とは英語で書かれた本をたくさん読んで英語力をアップさせる方法です。たくさん英語の本を読むことで英語の理解力が高まり、リーディングだけでなくリスニング、スピーキング、ライティングにも波及効果があります。
例えば、ネイティブスピーカー同士の会話ではすごい速さで単語が流れていきます。(1秒あたり3語)英会話は中学レベルの単語が9割以上使われていますが、この速さについていくには英語の理解力のスピードが必要となります。単語を聞き取るだけでなく文章を解析して理解する能力が必要となるのです。
この素早い理解力をつけるにはたくさんの英語を読まなければなりません。なぜならば、読んで分からない文は聞いても分からないからです。つまり、英語の多読はリーディングだけでなくリスニングにも大変効果があります。
・英語多読の3つのコツ
英語の理解力をつけるには本をたくさん読まなければなりません。
英語多読を行う際、正しいやり方で行わないと効果がありません。
1.必ずやさしい本から多読を始める。
2.英語を英語のまま理解する直読直解を心がける。
3.無意識に心の中で訳読しないように注意する。
英語を英語のまま理解するには「英語で考える」ことが必要です。厳密に言えば英語の語句が表している概念を考えます。例えば、Appleは(赤くて丸い果物)といったイメージをとらえる感じです。英語で考えるようになるためにはやさしい英語で訓練する必要があります。単語を日本語訳で考えるのではなく、その語句と概念を結びつけられるようにします。
難しい英語だと頭の中で日本語に訳してしまうため、英語の理解力やスピードに追いつくことができず英語力が向上しません。
子どもが母語を獲得するとき無意識に言葉の言語情報(文字や音声)と意味(概念やイメージ)を統合しています。英語学習者もネイティブスピーカーが母語を獲得するように言語情報と意味の両方をバランスよく学ばなければなりません。
・多読する際の注意
日本語で思考しないようにするため、やさしい英語で書かれた絵本や児童書などからスタートすると良いでしょう。訳さなくても理解できるレベルの英語で、英語の語順のまま理解します。
基本的な英文法はマスターしておく
英語多読を始めるには基礎レベルの英文法はマスターしておきましょう。文法を意識しながら英文を分析して読みます。とくに英語は文節(意味のかたまり)が分かるようになる必要があります。
なるべく辞書は引かない
分からない単語が出てきてもなるべく辞書を引かず、前後の文脈などから推測しましょう。何度も出てきて気になる単語は辞書を引いて正確な定義を確認します。できれば英英辞典でチェックします。
中上級レベルには訳注のついた教材
英文の難易度が上がると複雑な用法が増えるため、誤訳を避けるために訳がついた教材を選ぶと良いでしょう。英語学習者用の英字新聞などがおすすめです。
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英語多読―おすすめ洋書と難易度レベル
・洋書のジャンル(英文学)
英語多読を行う前に、英文学の基本的なジャンルを知っておくと本を選ぶときに参考になります。
1. 詩(Poetry, Poem, Verse)
2. 劇(悲劇、喜劇、悲喜劇)
3. 小説(物語:テーマとプロット)
4. 伝記
5.エッセイ(批評文学)
6.ユートピア文学(社会批判、教育、人間の本質)
7.ファンタジー、ゴシック
8.S.F.小説
9.民話文学
10. 児童文学
11. ノン・フィクション(小説・物語以外の散文)
12. 翻訳文学
多読で本を選ぶとき最も重要なのが、自分のレベルに合った「やさしい英語」で書かれた本を選ぶことです。本の種類は自分の好みで選んで構いません。(英文学のジャンルを参考)
→イラストや写真がある本は単語を概念として理解することができるためおすすめです。
・多読向き洋書(Graded Readers)
英文学のジャンルで紹介したものを参考に自分の好きな本を選びます。文学作品だけでなく、やさしい英語で書かれたものなら何でも構いません。ここでは英語学習者用に開発され、単語数と構文を制限してあるレベル別読本(Graded Readers)をご紹介します。
Graded Readers (GR)
語彙数1000~30000語程度
ピアソン・ジャパン、オックスフォード大学出版局ほか
英語学習者向けに書かれた本で多読入門期の教材として適しています。各出版社ともレベル0から7ぐらいまでの段階に分かれており、使用されている単語は各段階に合わせて語彙に制限が設けられているため英語初心者の方にも無理なく多読が行えます。また、英語学習者向けに映画の原作や名作、古典等をやさしくリライトしているため読みやすくなっています。もともと英語力がある人は、オリジナル作品に挑戦してみてもよいでしょう。
ピアソン・ジャパン(Peason’s Graded Readers)
Penguin Readers(PGR)ペンギンリーダーズ
Easystarts, Level 1,2,3,4,5,6の7段階
https://www.pearson.co.jp/catalog/pearsons-graded-readers.php
レベル | 語彙レベル | 語彙数 | 難易度 |
Easystarts level | 200語 | 1000語 | 英検3級~準2級 |
Level 1 | 300語 | 1000語 | 英検3級~準2級 |
Level 2 | 600語 | 2000語 | 英検準2級 |
Level 3 | 1200語 | 10000語 | 英検準2級~2級 |
Level 4 | 1700語 | 15000語 | 英検2級~準1級 |
Level 5 | 2300語 | 25000語 | 英検2級~準1級 |
Level 6 | 3000語 | 30000語 | 英検準1級~1級 |
オックスフォード大学出版局(Oxford Graded Readers)
Oxford Bookworms Library (OBW)シリーズほか
Pre-A1, A1, A2, B1, B2, C1の6段階
https://www.oupjapan.co.jp/ja/gradedreaders/index.shtml
レベル | 語彙レベル | 語彙数 | 難易度 |
Pre-1 | 250語 | 1500語 | 測定不能 |
A1 | 400語 | 5000語 | 英検3-5級 IELTS 1.0-2.0 |
A2 | 400~700語 | 6500語 | 英検準2級 IELTS 3.0 |
B1 | 1000~1400語 | 10000語 | 英検2級 IELTS 4.0-5.0 |
B2 | 1400~1800語 | 20000語 | 英検準1級 IELTS 5.5-6.5 |
C1 | 2500語 | 30000語 | 英検1級 IELTS 7.0-8.0 |
Graded Readers以外では児童書がおすすめです。本の読みやすさのレベルとしてYL(多読を推進しているSSS英語学習法研究会)という数値を目安に本を選ぶと良いでしょう。YLは0.0~10.0の数値で表し、数値が小さいほど読みやすくなります。(10.0は難しすぎて多読には適さない)
Penguin ReadersのLevel 6は、YL 6.0~7.0のレベルにあたります。(英検準1級~1級)
児童書では『Harry Potter and the Philosopher’s Stone』がYL 6.0~7.0レベルです。
YL 7.0以上は英検1級以上のレベルになるため難易度がかなり高くなります。多読用の本を選ぶ際、この数値を参考にしてください。
・The Lord of the Rings/ YL 7.5~9.0
・Howl’s Moving Castle/ YL 7.5~8.5
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・The Chronicles of Narnia/ YL 6.0~8.0
The Chronicles of Narnia (Complete Set; Fully Illustrated) (English Edition) 新品価格 |
・Harry Potter/ YL 6.0~7.5
Harry Potter: The Complete Collection (1-7) (English Edition) 新品価格 |
まとめ
英語多読の正しいやり方とおすすめの洋書をご紹介しました。難易度やレベル別に本をご紹介したので参考にしてみてください。英語を習得するには時間がかかります。時間をかけても上達しないのは「正しいやり方」で学習していないからです。やさしい英語にたくさん触れて「英語を英語で考える」ことが鉄則です。