人間は宇宙の縮図であり、両者の間には神秘的な照応関係が存在し、世界に存在する万物は「地・水・火・風」の4つのエレメントから構成されていると考えられました。このような秘められた影響関係に関する知識を利用して魔術的効果を得ようとすることを自然魔術といいます。
前回のブログでも紹介したようにハリーポッターに登場する賢者の石はあらゆる金属を純金に変え、これを溶かした液体を飲むと永遠の命を授かるという記載があります。今回はホグワーツ魔法学校で教わる魔法薬や魔術について解説していきます。
イギリス英語を学びたい人にとってハリーポッターは良い教材となります。著者のJ.K.ローリングがイギリス人のため小説はイギリス英語で書かれています。語彙や表現だけでなくストーリーや映画の舞台がイギリスなので、イギリスの文化や習慣を知る良いきっ[…]
ハリーポッターと魔法薬(自然魔術)
自然魔術の世界観によれば、この世に存在するあらゆる生物や物体相互間には神秘的な影響関係が存在していると考えられていました。自然魔術には各種占い、宝石、薬草なども含まれます。
例えば、占星術に取り入れられた天体の動き(自然現象)は、人間の運命に影響すると考えました。こうした自然界の事物相互間に存在する関係を解き明かそうとする各種の試みが科学の礎となりました。
・占星術 → 天文学
・錬金術 → 化学
・鉱物の魔力の研究 → 鉱物学
・植物の影響力の研究 → 植物学
・ヘルメス思想と文書
中世ヨーロッパでは人間と宇宙には神秘的な関係があり、相互に影響しあっていると考えられていました。これは前回説明したように錬金術の基本となった概念であり、ヘルメス思想の中心的概念でもあります。
伝説の人物ヘルメス・トリスメギストスの教えに基づく神秘主義的思想のことを指し、マクロコスモスの宇宙とミクロコスモスの人間の間に影響関係があると唱えています。
ヘルメス思想は「ヘルメス文書」と呼ばれる一連の文書に記載されています。ヘルメス文書には以下のようなものがあり、こうした知識を「ヘルメス学」と言います。
・哲学に関するもの
・占星術に関するもの
・錬金術に関するもの
・魔術に関するもの
◆主なヘルメス文書
エメラルド・タブレット | 13世紀 錬金術や占星術の奥義など |
ヘルメス選集 | 15世紀初頭 世界が光と闇から構成されている、魂の不死性、占星術や錬金術の原理など |
アスクレピオス | 天体の地上の事件への影響など |
ナグ・ハンマディ文書 | 1945年 エジプトで発見された文書で、一部がヘルメス文書 |
・魔術と医学(パラケルスス)
スイス生まれの魔術医師であったパラケルススは、自然魔術と医学を融合させ「あらゆる自然現象の背後に宇宙霊魂(四大元素と精霊)と呼ぶ存在を想定し、それらが人間の生命活動にも影響する」という説を唱えた。この概念は後に神智学や心霊研究にも影響を及ぼした。また、錬金術師の下でカバラ研究なども行っていました。
・医学
・錬金術
・自然魔術
・地(土)― ノーム
・水 ― ウンディーネ
・火 ― サラマンダー
・風 ― シルフ
草木、動物、人、無生物などに宿っている超自然的(自然界の法則を超えた、科学では説明のつかない神秘的なものごと)な存在。肉体から解放された霊や気を意味する場合もある。
ハリーポッターと魔法薬(スネイプ)
錬金術の研究において驚異的な力を持つ伝説の物質「賢者の石」がハリーポッターに登場します。賢者の石が液状になった「エリキサ」も魔法薬の一種で、これを飲めば不老不死になれると伝えられる霊薬。
・ホグワーツ魔法薬学
ホグワーツ魔法学校でセブルス・スネイプ先生から教わる教科の1つ。魔法薬学クラスでは古代の錬金術のレシピから選ばれた薬の材料や希少鉱物を用い、ブンゼンバーナーを使って魔法薬を作っていました。
飲んでから1時間だけ変身したい人物となれる薬。第2巻の「ハリーポッターと秘密の部屋」では、ハリー、ロン、ハーマイオニーが伝説になっていた秘密の部屋の話をドラコから聞き出すためポリジュースを作った。ハリーとロンはドラコの取り巻きに変身することができたが、ハーマイオニーは薬に猫の毛を入れてしまったため猫の姿になってしまいました。
Elixir of Life(命の霊薬/エリキサ)不老不死の薬
Veritaserum(真実薬/ベリタセラム)自白薬
Draught of Living Death(生ける屍の水薬)眠り薬
Floo Powder(煙突飛行粉/フルーパウダー)遠くへ移動できる粉
魔法薬調合法(魔法薬学)
上級魔法薬(魔法薬学)
薬草ときのこ1000種(薬草学)
幻の動物とその生息地(魔法生物飼育学)
これは9種類の薬草を用いて毒や感染症を治療するために声に出して唱えると、驚くほど魔術的な効果があると記されている。
薬の歴史を紐解けば自然の中にある植物が治療に使われてきました。現代では医薬品に取って代わられましたが、そのルーツは薬草で…
WARNER BROS. Studio Tour London
The Making of Harry Potter(メイキング・オブ・ハリーポッター)
住所:Studio Tour Drive, Leavesden, WD25 7LR
行き方: ロンドンユーストン駅からワトフォード・ジャンクション駅まで20分、そこからバスに乗り換えて15分
オフィシャルHP
https://www.wbstudiotour.co.uk/
まとめ
ハリーポッターに登場する魔法薬学(ポーション)について自然魔術の歴史と一緒に解説しました。賢者の石から作られる「命の霊薬エリキサ」も魔法薬の一種です。魔法薬はフィクションですが、薬草(漢方薬やハーブ)は今日でも医療に用いられています。
ハリーポッターは魔法使いのお話です。イギリスが舞台で登場人物が多く、魔法の種類もたくさんあります。イギリスはハリーポッターだけでなく、魔法使いが登場するファンタジー小説や映画が老若男女に大人気です。それはイギリスという土地柄も関係しています[…]